相続時のトラブルは財産のあるなしに関らず増えてきているのが現状です。特にご資産が土地、建物という不動産だけの場合で各相続人が法定相続分を主張する中で、遺産分割協議が円満に行われない可能性が生じます。遺言は、「法定相続よりも遺言が優先される」という大原則がありますので、遺言書を残されることで、予めご自身(被相続人)の意思を明確にすることができます。一般に、相続人が多くなればなるほど遺産分割協議による話し合いがまとまりにくくなる傾向があります。遺言を残すことでご自身の意思を残された方へ伝え、その後の具体的な手続きがスムーズに運べるようになります。一つのメッセージにもなるのです。無用の争いを避けるためにも、ぜひ遺言書を書かれることをお勧めしております。また、遺言の作成には時間がかかります。予め準備が必要ですので、いざという時に間に合わないということのないように、お手伝いをさせていただきたいと思います。
家庭裁判所で行う検認手続きは、遺言内容の有効、無効を判断するものではありません。検認時における遺言書の形状や日付、署名、押印、加除訂正の状態などを調べ、確認、記録をして、その後の偽造・変造を防止するための手続きです。検認は内容を確認しますが、あくまでも遺言書の存在を明確にするための手続きで、遺言の有効、無効を完全に決定するための手続きではありません。そのため、検認を受けた遺言書であっても全てが有効となるのではなく、その後に無効とされる可能性があります。なお、自筆証書遺言を法務局で保管してもらう保管制度を利用すれば、検認手続きは不要となります。これまで自筆証書遺言で問題になっていた偽造、変造の可能性や紛失の心配は大幅に減らせます。形式的な問題の有無は保管する際に確認されるため、法務局での保管制度を利用した自筆証書遺言については検認手続きは不要です。また、公正証書遺言も検認手続きは必要ありません。公証役場で公証人と2名以上の証人の立会のもとで作成され、原本は公証役場で保管されており、偽造や変造のおそれもなく検認手続きは必要ないとされています。
検認には遺言書自体の存在確認とその内容を保全するという意味合いしかないため、検認手続きを行う必要性を感じない方もおられます。しかし、その後の不動産の相続登記や金融機関での名義変更などの様々な手続きを行う際に有効な遺言書として使用できるので、検認は必要不可欠な手続きといえます。家庭裁判所に検認手続きの申し立てをすると、家庭裁判所から相続人全員に対して遺言書の開封期日(申請から約1か月後です)が通知されます。無事に検認手続きが完了すると検認済みの遺言書として、登記や金融機関での口座の解約などの各種手続きに利用できます。
自筆証書遺言では原則遺言者が全文、日付、署名を自署して押印することが要件をなっております(財産目録はパソコンでの作成可能)。遺言書は遺言者の自由な最終意思でもありますので、添え手をした場合他人の意思が働くおそれがあることから、無効となる可能性が大きくなります。誰か他の人が意図的に作らせたと思われがちで、それを防ぐためには公正証書遺言にしておくと良いでしょう。公正証書遺言は遺言を遺す方が、公証人にどのような遺言を遺したいかを話し、公証人がそれを文章にまとめることにより作成される遺言書です。内容が明確で証拠能力も高く、字が書けない方も作成できます。なお当事務所でもお客様の残したい思いをお伺いして、当事務所にて公証人と事前の打ち合わせを行い、文案を起案致します。自筆証書遺言では誤字脱字、言葉が足りず、法律に沿っていない内容になっいるなどの間違えも多く見受けられます。遺言はご自身の最後の言葉ですので、間違えのないようにしていただきたいという願いから公正証書遺言をお勧めさせていただいております。
遺言書がない場合は、相続人全員で協議で誰がどの財産を分けるかを決めます。この場合弟さんが行方不明ということですが、不在者の生死が7年以上明らかでないときは、利害関係人は家庭裁判所に「失踪宣告」の審判申し立てができます。家庭裁判所の審判により失踪宣告が確定すれば、失踪期間の満了時から弟さんは死亡したものとみなされて、相続が開始します。なお、失踪の状態が7年未満であれば、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任の申し立てをして、行方不明の弟さんの代理人として遺産分割協議に参加をしてもらうことになります。失踪宣告の申し立てができるのは、利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、財産管理人、受遺者など、失踪宣告を求めるにあたって法律上の利害関係を有する者)です。この場合、不在者(行方不明の弟さん)の従来の住所地または居住地を管轄する家庭裁判所で申し立てを行うことになります。
相続人の調査を行い相続人を確定することで遺産分割協議が滞りなく進みます。ご相談者の中には、「子供は一人だけで他にはいません」と言われる方もおりますが、実際には連絡が取れない他の相続人が発見されて、せっかく進んだ遺産分割協議はやり直しとなります。相続人の確定をすることで、法定相続人となる方が他にも存在するのか、どの優先順位で相続するのかが分かります。ですので相続人の確定は遺産分割協議の前に行い、全員で協議に参加をしていただきます。
相続人の確定のために使った戸籍謄本や相続関係説明図は、不動産の名義変更や預貯金口座の名義変更、解約などにも使用します。
被相続人が保険料を払い、被相続人の法定相続人を受取人にした場合、この生命保険金は保険契約に基づいて受取人が受け取るものですので、受取人固有の財産として評価ができます。そこで、生命保険金は通常は遺産分割の対象にはなりません。ただし、相続税法上は「みなし相続財産」として課税対象になります。この場合でも、生命保険金の全額が課税対象になるのではなく、非課税の範囲が設けられております。非課税は、500万円×法定相続人の数(相続放棄をした人も含む)の金額です。